震災後はキャリートレードが復活か

円キャリートレードの復活で円独歩安

震災直後の円相場の急騰は、株価急落による本邦投資家のリスク許容度の低下とそれに起因する海外資産の売却・国内への資金還流をあてこみ、海外投機筋が思惑先行で円買いを進めたことが主要因である。FX投資家は急激な円高に本当に驚いたであろう。

 

東日本大震災

 

1995年の阪神大震災直後にドル円相場が80円を割り込んだことを材料に、円を買う向きもみられた。加えて、原発問題の深刻化がリスク回避志向を強め、株価下落と予想変動率の上昇をもたし、「リスク回避=円買い」と刷り込まれた発想による投機を後押ししたようだ、

 

実際には本邦投資家による海外資産売却の動きはみられていない。むしろ、震災後にも対外証券投資はネットで投資超過、資金流出となっている。保険会社は保険金支払いに十分な手元流動性を有しており、海外資産売却による資金化の必要はないようだ。

 

急激な円高に対してG7(先進7ヵ国)緊急電話会合がもたれ、協調円売り介入が実施された。実需の円買いフローを欠くなか、協調という強力なコミットメントが示されたことから、投機的な円買いは解消。円高を止めるのに十分な効果を得だ。

 

その後、比較的早い段階で、原発問題に対する過度の懸念が解消するにつれて、グローバルなリスク回避は解消。海外では株価は概ね震災前の水準を回復し、予想変動率も低下した。日本経済は当面厳しい状況に直面しそうだが、世界経済への影響は、生じるとしても深刻なものにはならないとの見方が定着しつつある。リスク選好の回復および予想変動率の低下は、為替市場においてキャリートレードを活発化させる。為替相場動向を左右する鍵となるのは金利動向・金利差動向だ。

予想よりも速い展開で円安に

2011年に入ってから、先進国の金融政策はいよいよ「超緩和状態」から抜け出そうという局面に入り始めた。欧州中央銀行(ECB)による利上げ、米連邦準備理事会(FRB)による量的緩和の解除、その他中央銀行による利上げスタンス。先々の金利やインフレ率の動向を織り込む長期金利の動向で大きな流れをみた場合、2010年11月にFRBが量的緩和第2弾を実施した時点が金利のボトムだったといえそうだ。円金利が超低位で硬直的なことを踏まえれば、円からみた先進国内における内外金利差は、いよいよ拡大局面を迎えたことになる、とくに米欧の金融政策が動き始めることの意味・影響は大きい。

 

2010年後半、11月までは、ドルキャリートレードが隆盛を極めた。量的緩和第2段を見越した米長期金利の低下がドル安トレントを支え、ゼロ金利とあいまってドルの持続的な下落をもたらし、それがさらにドルキャリートレードを活発化させた。 2011年は、米長期金利は底打ちし反転上昇。量的緩和の終了が見込まれていたとなれば、ドルキャリートレードは沈静化すると予想するのが妥当だろう。 ドルの代わりに売却される通貨の最有力候補は、引き続き金利がゼロ近傍を続けるであろう円だ。 ドルキャリートレードから円キャリートレードへか、本年のテーマではあった。

 

今般の震災によって、こうした変化は速まったと考えられる。まず、日銀は現状維持から積極的な緩和へと舵を切った。当座預金残高は過去最大の40兆円超まで拡大している。量的緩和を終了しようとしているFRBや、利上げに動いているECBの動きとは正反対だ。 G3(米・日・ユーロ圏)における金融政策の違いが一段と明確化したことは、円かキャリートレードによって独歩安になる条件を整えた。需給面からは、当面、本邦製造業の生産が低迷し、輸出が停滞することから、円高圧力が軽減される。

 

個人投資家の国際分散投資意欲が高まることも想定されよう。機関投資家がやや慎重なスタンスに止まるとしても、投機筋と本邦個人投資家主導で、予想よりも速い展開で円安が進む可能性もあるのではないか。キャリートレードが隆盛なもとでは、ドル、スイスフラン、円の3通貨が売られやすい。なかでも円か最弱通貨となろう。ドル/円相場でもドル安円高が進むがそれ以上に高金利通貨の対円相場は堅調な展開を続けるのではないか。

日経平均はボトム水準からの反発が期待される。ギリシャ支援など欧州債務問題への警戒は強い。しかし、米国市場では9月のADP雇用統計やISM非製造業景況指数が相次いで市場予想を上回ったことで景気先行き懸念が後退しており、日本株市場はこれを材料視することになる。そのため、物色は内需成長銘柄からハイテク、自動車、素材など景気敏感セクターの反発が見込まれる。景気敏感セクターの銘柄には連日で年初来安値更新などが目立っていたこともあり、調整トレンドの中ではあるが、テクニカルリバウンド期待が高まろう。FXではドル円がユーロ高につられ、上昇するであろう。